中国著作権ニュース(2016年上期)

ネット上でのライセンシングプラットフォームの整備着々、1クリックで転載許諾手続へ

2016年6月初頭、北京市で「インターネット著作権の保護・運営に関わるニューメディアフォーラム」が開催され、ネット上で転載許諾を行うことができるライセンシングプラットフォームが紹介された。
中国は2015年に≪ネット転載の著作権秩序を規範化することに関わる通知≫を公布し、ネットメディアが他者の作品を転載することについて、著作権法の関連法規を遵守し、著作権者の許諾を得て報酬を支払うべきであることなどを強調した。こうした動きに合わせる形で進められてきたのが、「著作権印」プラットフォームの整備だ。
これは、ライセンス取引へのリンクとなるマークを各メディアが自らのウェブサイトや、微信(WeChat)、微博(Weibo)などのコンテンツに埋め込むことで、当該の記事を転載したい場合、クリック1つでライセンス許諾の手続きに進めるというもの。使用料の支払いもアリペイやWeChatなどの決済システムを使って簡単に行うことができる。ライセンシングの手続きが簡素化されるだけでなく、インターネット正規版の流通促進、海賊版一掃にとっても有用なツールとなる見通しだ。
2016年6月2日付の中国青年報によると、既に中国の大手メディアの一部はこの「著作権印」を使ったライセンスを開始している。プラットフォームに登録している機関は5,000社あまり、収録コンテンツは5万本超、ライセンスについては延べ2万回あまりとのことである。

「We chat知的財産保護白書」に見るニューメディアの知財保護

「中国版LINE」とも称される中国のメッセンジャーアプリ「WeChat(微信)」。日本を訪れた中国人観光客がWeChatで母国の友人や家族とチャットしながら買い物をする姿も珍しいものではなくなり、日本でも徐々に存在が認知されつつある。

 

そのWeChatの運営会社であるテンセントが、2016年年初、中国のインターネット会社としては初めて、WeChatに関する知的財産権保護白書を発表した。白書によると、2014年第4四半期~2015年第4四半期に、WeChatの「公衆号」(いわゆる企業などのオフィシャルアカウントを指す)について寄せられた苦情は2.2万件で、うち知的財産権に関するものが1.3万件で60%を占めた。このうち、知的財産権侵害行為に関する苦情では商標権に関するものが約55%と最多で、残りはほぼ著作権に関するものであった。また著作権侵害の詳細を見ると、文字関連が61%、画像関連が25%を占め、動画関連は14%であった。

 

これに関し、2016年3月15日付の大連日報は、従来の著作権侵害とWeChatのようなニューメディアによる著作権侵害の性質の違いを指摘している。
2015年下半期の例では、中国の某オンラインゲームのキャラクターが有名な武侠小説の登場人物をそのまま使用しているとして著作権侵害で起訴され、ゲーム運営会社に対し賠償金など150万元の支払が科せられた。その他、中国のプロサッカーリーグ1部リーグの独占放映権を有しているスポーツ番組制作会社が、試合を無断で放映したとして動画配信会社3社を訴え、1500万元の賠償請求を行っている。
こうしたいわゆる「従来型」の著作権侵害が利益創出を目的としているのに対し、WeChatのようなニューメディアにおける著作権侵害は、知的財産権に対する認識不足によるところが大きいのではないかというのが大連日報の見方である。文章の転載や引用に関する著作権法の基本ルールを知らずに、「いいなと思ったら気安く拝借」レベルの行為が企業の運営するアカウントでも行われているというわけだ。ただ、同紙はニューメディアにおける情報の伝達と共有というメリットとの折り合いについても指摘しており、どの時代にあっても著作権の遵守が大前提となるが、例えば著作権の制限範囲を拡大するなどの方法でバランスを保ってもいいのではないかという有識者の見解を紹介している。

 

昨今、訪日観光客を呼び込むツールの1つとしてWeChatやWeibo(微博)といった中国のSNSに着目する日本の企業も多い。自社が中国語で発した一文がいつのまにか中国の見知らぬ会社のキャッチフレーズになっている、そんな事態もまるでない話ではないだろう。日系企業がビジネスを進める上で中国での知的財産権侵害への対応はかねてから重視されていたが、既にインターネット時代の新たな対応を検討すべき時期にさしかかっているようである。

中国音楽著作権協会による2015年の著作権使用料徴収額は1.7億元。順調な伸びを示すも世界の中では低水準。

出典:中国国家知識産権局

 

中国音楽著作権協会(MCSC)はこのほど、2015年の音楽著作権使用料の徴収額が1.7億元で、前年比24%の伸びとなったことを明らかにした。
また、MCSC発足以降の23年間で、使用料の徴収総額は10億元を突破した。
MCSCによると、2015年に徴収した著作権使用料の内訳は、複製権5%、上演権41%、放送権23%、情報ネットワーク伝達権(※)27%、海外の関連協会からの送金4%である。
MCSCの関係者は、中国の音楽著作権使用料徴収額は順調な伸びを見せているものの、世界的には未だ低い水準にあると語った。

 

著作権協会国際連合(CISAC)が2015年10月に公布した≪著作権集中管理グローバルレポート≫によると、120か国、230団体の著作権集中管理協会による2014年の著作権使用料収入総額は79億ユーロ。1人当たり平均でみると、世界全体が1.33ユーロ、ヨーロッパが5.49ユーロ、北米が3.74ユーロ、アフリカが0.07ユーロだが、中国は0.02ユーロにも至っていない(参考:日本は5.84ユーロ)。BRICS5か国の音楽著作権集中管理協会の中でも、MCSCの年間徴収額は4位で、インドを超えているのみだ。
CISACの報告書によると、2014年の使用料徴収額は日本音楽著作権協会(JASRAC)が7.43億ユーロ(約53億元)、韓国音楽著作権協会(KOMCA)が8500万ユーロ(約6億元)となっている。MCSCの使用料徴収額もまだまだ伸びる余地がありそうだ。

 

(※)情報ネットワーク伝達権:
有線または無線の方式によって公衆に著作物を提供し、公衆がその自ら選定した場所と時点において当該著作物を入手できるようにする権利のことで、中国の著作権法第十条に定められています。いわゆる「送信可能化権」に近い性質の権利であると考えられます。

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