中国国内初クラウドサーバーの著作権侵害事件

クラウドサーバー事業者の著作権侵害に関する責任は?

中国国家版権局のニュースにおいて、2019年12月7日に国際知的財産保護協会(AIPPI)中国分会が著作権フォーラムを開催し、2019年度の著作権に関するトップ10事件について発表したことが紹介されています。

 

 

同サイトのニュースでは、トップ10事件の選択方法は「専門家の評価+オンライン投票」により得られた結果であり、事件における著作権の保護、法律理論、実務の面から一定の典型性及び注目度を有し、著作権の研究及び検討において豊富な素材と明確な方向性を提供したという理由で選ばれたとしています。

 

トップ10事件の中で注目されるのはBeijing Locojoy Technology Co.、Ltd. (北京楽動卓越テクノロジー有限会社、以下Locojoy社という)とAlibaba Cloud Computing Co.、Ltd. (阿里クラウドコンピューティング有限会社、以下Alibabaクラウド社という)の間で情報ネットワーク伝達権 を争った事件です。
この事件は中国国内初のクラウドサーバーの著作権侵害問題を争った事件であり、推奨理由は「クラウドサーバー提供者は侵害に関する通知を処理する際にユーザーのプライバシーを侵害するおそれのある対応について明確に拒否することができ、侵害による連帯責任を負うリスクを懸念する必要がない」 と示したことです。

 

具体的には、北京知的裁判所は国の標準及び業界論理、「情報安全技術クラウドサーバー安全指南」の規定に基づいてクラウドサーバーレンタルサービス提供者には極めて厳格な安全保護義務、秘密保持義務、プライバシー保護義務が課せられており、顧客からの授権なしには顧客情報のアクセス、修正、開示、利用、譲渡、消滅をすることはできず、かつ、有効な管理及び技術措置を設けて、顧客の情報及び業務の秘密性・完全性・利用可能性を確保する必要があることを明示しました。

 

【Alibabaクラウド社 vs Locojoy社】事件の概要は?

以下では、この事件を簡単にまとめてご紹介します。

 

事件の非控訴人(一審原告)であるLocojoy社は2012年12月10日に「我叫MTOnline」というゲームソフトV1.0.0の開発を完成し、国家版権局が発行する「コンピュータプログラム著作権登録証書」を取得しており、ゲームの製作者及び著作権者です。

 

2015年8月にLocojoy社は「我叫MT暢爽版」というゲームが「我叫MTOnline」のゲームプログラム等を不法複製し、www.callmt.comにおいて不法に利益を得ているとして当該ホームページを調査したところ、当該ページに経営者に関する情報はありませんでした。
結局、「我叫MT暢爽版」のゲーム内容が保存されているサーバーレンタルサービス提供者であるAlibabaクラウド社(控訴人、一審被告)に二回通知書を送付し、削除及びサーバーレンタル者の情報提供を要求したところ、削除されなかったため、北京市石景山区人民法院(一審)に提訴しました。

 

一審裁判所は、ゲーム「我叫MT暢爽版」は「我叫MTOnline」の海賊版であると判断し、かつLocojoy社の通知書の有効性を判断した上で、「権利侵害責任法」36条によりサーバー提供者であるAlibabaクラウド社はサーバーレンタル者の中に侵害行為があるか否かの審査をする義務はないものの、そのサービスの提供により他人の重大な利益が損害される場合、 Alibabaクラウド社の消極的対応は損害の拡大をもたらしたと判断し、損害賠償責任を負うべきであると判断をしました。

 

Alibabaクラウド社は一審裁判所の判断を不服とし、北京知的財産権法院に控訴しました。

 

二審裁判所では、通知書は、①通知人の名前(名称)及び連絡先、②措置が必要なホームページアドレス又は侵害内容を正確に確定できる情報の提供、③当該情報削除の理由を明記する、という法定要件を満たす必要があり、要件を満たさない通知書を発した場合、相手方は免責を主張することができると判断しました。
この要件に照らし、裁判所はLocojoy社が発した通知書が専用の侵害通知の窓口を介せず通知書を送付したことや侵害に関する証明材料及び説明もなかったため法定要件を満たさず無効であり、この場合、Alibabaクラウド社に確認・調査義務を転嫁してはいけないと判断しました。そして、Alibabaクラウド社の免責主張が成立し、本件では侵害責任を負わないことになり、一審の結果が逆転しました。また、Alibabaクラウド社が仮に有効な侵害に関する通知書を受付けていたとしても前記の国の標準や業界基準により、削除等の措置よりは侵害者に通知する措置の方が適切であると判断をしました。

 

この事件は権利侵害に係った事件におけるサーバーレンタルサービス提供者の責任範囲を明確にするとともに、権利者が無効な通知書を発行した場合には、サーバーレンタルサービス提供者は確認・調査義務を負わないということを明示した点で、注目に値すると言えるでしょう。

 

(日本アイアール株式会社 B・Y/K・F )

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