二次創作は著作権侵害の免罪符にはならない

 

最近、上海市第三中級人民法院が有名アニメフィギュアの海賊版事件に対して終審判決を下しました。この事件に関わる金額は、なんと3,000万元(約6億円)に上ります。

二審において、事件の主犯である汪氏が二次創作を理由として抗弁しましたが、検察官から「その行為が二次創作の保護範囲を完全に逸脱している」と厳しく指摘されました。それでは、事件の詳細を見てみましょう。

1.事件内容

2020年から、被告人の汪氏は共犯者である韓氏らと共謀し、著作権者の許諾を得ずに『聖闘士星矢』、『SLAM DUNK』等の有名作品のキャラクターを基に、星矢、城戸沙織、ムウ、桜木花道等人気キャラクターのフィギュアをデザインして、工場に金型制作及び生産を委託しました。さらに、包氏、呉氏らを通じてフィギュアを国内外で流通させました。鑑定の結果、被告人の汪氏らが生産したフィギュアは著作権者の作品の複製に該当するとされ、違法営業額は3,000万元(約6億円)に上ることも判明しています。

2.第一審の判断

上海市静安区人民法院がこの事件の第一審を審理しました。法院が被告人の犯罪目的、不正利得の額及び他人の美術作品を無断複製・発行した事実、特別に重大な情状(犯罪行為の悪質性や結果の重大性等)等を総合的に考慮し、被告人の汪氏、韓氏に対して著作権侵害罪の有罪判決を下しました。汪氏に対しては懲役5年、罰金800万元を併科し、韓氏に対しては懲役2年10ヶ月(執行猶予2年10ヶ月)、罰金50万元を併科しました。

3.第二審の判断

その後、汪氏は第一審判決を不服として上訴しました。

第二審の審査において、汪氏は(販売されたフィギュアが)著作権者のアニメ・漫画キャラクターに基づいた二次創作物であること、また、継続的にライセンスを得ようとしており(製造活動を)続けながら許諾を求めており、2023年8月にようやく許諾を得られたことを主張しました。

しかし検察官に「二次創作だとしたら、なぜ何度もライセンスを得ようとしたか」と問われると、汪氏は黙秘するしかありませんでした。検察官はさらに「汪氏が許諾を得ていないことを知りながら、体型比率から表情、服装着色、仕草等まで原作の登場人物と実質的に同一のフィギュアをデザインした。『刑法』第217条著作権侵害罪に規定する複製・発行行為は、平面から平面への複製にとどまらず、平面から立体物への複製も含まれる。汪氏の行為は二次創作の保護範囲を完全に逸脱している。」と指摘しました。第二審法院である上海市第三中級人民法院は、検察官の主張を認め、被告人の上訴請求を却下し、原判決を維持しました。

4.二次創作の考え方

この事件において、汪氏は「自分でデザインした」と主張しましたが、そのフィギュアは原作のキャラクターと実質的に同一です。単に平面の画像を立体化するだけで、新たな視点や表現を取り入れずに、原作者の独創的な表現から離脱しなければ、二次創作にはならないと考えられます。また、たとえ二次創作に該当する場合であっても、二次創作は著作権侵害の免除事由にならず、著作権者の許諾が必要となることに留意すべきです。変容的利用(transformative use)に該当し、フェアユース(合理使用)の範囲に入る場合のみ、免責の可能性が生じます。

(北京恵利爾知識産権信息諮詢有限責任公司)