中国の著作権登録の効力と商標との関係

著作権登録に実体審査はない

まず、中国の著作権登録手続きでは、いわゆる実体審査は行われません。即ち、書式に問題がなければほぼ登録することができます。

真の権利者であるか、著作物の創作完成日や公表日に間違いがないか、先行の登録があるかなどについて、一切審査されません。
そのため、著作権登録証明書を持っていれば、必ず権利者として認められるとは言えません

場合によって、著作物にかかわるオリジナルデータやデザイン会社との依頼契約などの権利の帰属を証明できる証拠を提出しなければなりません。
とはいえ、著作権登録証明書は、権利の帰属を証明できる「初歩的証拠」として、異議申立てや無効審判などの商標案件において、効力を発揮しているのが実情です。
相手が反論を主張しない限り、基本的には審査官に認められます。

いわゆる冒認商標との関係

冒認商標に対する場合、著作物の独創性や創作日と公表日、相手の悪意、冒認商標との類似程度など、色々な要素を総合に考慮しなければなりません。
例えば、①あまりにも簡単なデザインである場合、著作権の効力が弱いと思われます。
②何かが起こる前に登録されているものより、何かがあった後に登録されたものは、その事実関係が疑われやすいと思われます。

独創性が強く、冒認商標とほぼ同一、且つ冒認商標の出願日前に登録された著作権であれば、異議申立てや無効審判の勝算をある程度高めることができると思われます。
著作物の独創性が、それほど強い訳ではない場合でも、冒認商標と著作物が完全に同一だった場合、相手の悪意を証明できると思われます。
また、著作権の登録日は冒認商標の出願日の後の場合、それ以前に別案件で同様の商標出願履歴があれば、冒認商標の以前に既に権利を所有していたことを証明できる場合があります。

著作権登録には、商標のように「指定商品・役務」という概念が無い

著作権登録の要否について、商標権と比べ、著作権にはもう一つのメリットがあります。
それは、著作権登録は指定商品・役務、類似群及び区分は問わないということです。
商標権の効力は、登録された指定商品・役務の類似群に限られていますので、他の類似群また区分の冒認商標を取り消す場合、商品の関連性や商標の知名度を証明しなければなりません。これは簡単に証明できることではありません。但し、著作権は違います。


著作権登録をしていれば、どの区分の冒認商標に対しても対抗できる可能性があります。従って、独創性の強い図形商標については、著作権の登録の活用をおススメします。また、それと同時に、関連するオリジナルデータやデザイン会社との依頼契約など、証拠をきちんと保存しておくことも忘れないようにしましょう。

(日本アイアール株式会社 S・F)