広東省深セン市南山区人民法院(以下、「法院」をいう)は、AIの創作物に関する著作権案において、AIの創作物は独創性があり、著作物として保護されるという判決が下されました。これは、中国で初めて AIの創作物が司法判断で著作物として認めた判例です。

1.本件の背景・経緯

「Dreamwriter」はテンセント社より開発されたAI文章作成のロボットです。開発以来、毎年 30 万件の文章を生成してきました。

2018 年 8 月 20 日 、「Dreamwriter」は経済に関するニュースを収集し、開発者の学習に従い、およそ2分後、経済指標に関する以下の文章を生成し、テンセント証券のWebページ上に掲載しました。

「午後のコメント:上海指数は 0.191%わずかに上昇して 2691.93 ポイント 通信事業者や石油部門が主導します」

この文章が掲載された Web ページには「本文は、テンセントのロボット 「Dreamwriter」により自動で執筆されたものです。」と記載されていた。

当日、被告人の上海盈訊科技有限公司は、テンセント社の許可をもらわず当該文章をコピーし、自社の「オンラインローンの家」というウェブサイトで同じものを発表しました。

その後、テンセント社は被告人の行為が著作権侵害になると主張し、訴訟を提起しました。口頭弁論においては被告人がテンセント社の述べた事実を認めました。

2.本件の焦点

本件の焦点は、AIの創作物が著作権法上の作品になるのか否かです。これに対して、南山裁判所は判決書で以下の意見を述べました。

「関連文章は原告人チームよりDreamwriterを用いて形成しました。その外的表現は文字作品に対する要求を満足しましたほか、その内容は当日午前中の証券情報及びデータに対する選択、分析、判断を含めました。文章の構成は合理的で、辻褄も合っており、ある程度の独創性を有します。」

なお、Dreamwriterは自然人ではない、著作権者とは言い難く、Dreamwriterの本件創作物当該文章の著作権者は原告とします。すなわち当該文章は法人作品となります。

よって、南山裁判所は被告人が原告人の情報ネットワーク伝達権を侵害したと認定し、被告人が既に関連文章を削除したのでRMB1,500の経済損失賠償という判決を下しました。(本案はまだ上訴期限内です。)

3.コメント

中国の現行法では、ソフトウェア又はAIの創作物に関する権利帰属の明文規定がないので、著作権法上の「作品」に該当するか否かを判断する際に、「自然人より創作する」という要件を満たすかどうかを判断する必要もあります。

本判決後の 1 月 11 日、早速討論会で AI 生成物に対する著作権法による保護のあり方が専門家らにより議論されました。テンセント法務部担当者、北京知識産権法院裁判官、大学教授らによれば、本事件に関する判決は妥当であり、著作権法により保護すべきとの意見がありました。

他にも、「創作の中では、人工知能の効用が人間の知的労働、肉体労働を減らすためだけで、人間の智慧及び身体の延長になると思われます。人工知能の形成したものを人間の知的成果、いわゆる思想または感情の表現に看做すことには、法理上に妨げが存在しません。文芸、芸術又は科学分野内の独創性を有するAI形成内容を作品だと認め、著作権として保護できれば、作品の創作と伝播に有利ですし、文化の多様性進化、又は積極的に新しい人工知能を開発することを励ますことができる」といいた意見がありました。

(北京恵利爾商標代理有限責任公司)