中国著作権法の改正に関する重要な変更点について本サイトで既に紹介しました。

今回は少し違った視点から改正内容を見てみたいと思います。

1.著作権者の範囲

著作権者の範囲について新著作権法9条では作者以外に2項において「その他本法において著作権を享受する自然人、法人、或いは非法人組織」と定めています。すなわち、旧著作権法の中国公民を自然人に改正したわけです。


 一見日本の著作権法の自然人の範囲と同じように見えますが、実際には僅少な差が存在しています。なぜなら、新著作権法2条において著作物を公表するか否かを問わず、著作権を有する主体は中国公民、法人、非法人組織と定めているからであります。
では、外国人はどうでしょう。外国人に関する規定については、今回は改正されませんでした。


つまり、外国人、無国籍者の作品は作者の国、或いは居住地の国が中国と締結した協議、或いは共同に締結した国際条約によって著作権を享受し、法律の保護を受けることができます。また、外国人、無国籍者の作品の出版が最初に中国でなされた場合、出版される日から著作権を享受します。或いは、中国以外の国で出版した後、30日以内に中国において出版がなされた場合は最初の出版と同時に行われたとみなすことができます。


今回の中国公民から自然人に改正されたのは著作権者になり得る外国人も含めて一括して自然人にしたと考えられます。

2.その他組織を非法人組織に改正

その他組織と非法人組織の概念について現在中国内部においてもその定義が明確になっていません。学者の間でも同一論と相異論が共存しており、立法上でもその使い分けについては言及していません。


興味深いどころは、2021年施行の中国民法典の主体になり得るのは非法人組織です。一方、2022年に施行された民事訴訟法の主体になり得るのはその他組織です。


現在中国学者の中では相異論が多数でありますが、範囲について非法人組織>その他組織であるという主張と非法人組織<その他組織であるという主張に分かれているそうです。


しかし、両法律における非法人組織とその他組織は重複する部分が多く、差異については現在不明瞭なままです。今後、中国がどのように解釈するかによって言葉の意味が変わる可能性もあるでしょう。

3.著作権登録制度の条文化

新著作権法12条2項では著作権登録制度を明文に定めました。この条文により、著作権及び著作権に関する権利の著作権登録制度は明確な法的地位を確保することになります。

4.複製権について

新著作権法9条1項5号の複製の方式について本来の印刷、コピー、石刷り、録音、録画、ダビング、リメイク以外にデジタル化の方式を追加しました。

5.視聴著作物における著作権帰属問題

旧著作権法15条において映画作品、及び映画製作方法に類似した方法により創作された作品の著作権は製作者に帰属していますが、新著作権法では視聴作品中の映画、ドラマ作品の著作権のみを製作者に帰属しました。映画、ドラマ以外の視聴作品の著作権帰属については当事者間の合意に依るものと定め、合意がない場合又は合意が明確ではない場合は製作者に帰属すると定めました。但し、作者は署名権と報酬を受ける権利を享有します。

6.まとめ

上記以外にも共同著作物における各著作者の権利行使、及び今回の改正において最も重要な損賠賠償額の引上げ等の問題もありますが、当サイトの別の文章で既に紹介されましたので、ここでは省略することにします。

今回の法改正は技術の発展に伴って発生した著作物の変化に配慮した法改正であるとともに、著作権者の保護、侵害の防止(見せしめ)、救済に重きをおいた法改正でもあると考えられます。

(日本アイアール株式会社 F・K)