へネシーがボトル形状に係る著作権侵害訴えるも苦境に、しかしその理由は意外なところに・・・

テネシーのブランデー

中国での権利侵害への対抗策として、各種著作物について中国で著作権登録を行っておくお客様が増加しています。これが功を奏した例も勿論少なからずあるわけですが、今回のへネシー社の事件は、登録内容の適否を突かれて不利な展開となるという若干珍しい展開となっています。

 

 

2019年5月9日付の人民網によると、へネシー社は、高級ブランデー「パラディ」のボトルの形状の著作権を侵害しているとして広東省の4社を起訴。弦楽器のボディのような緩やかな曲線を特徴とするパラディのボトルは2001年に創作されており、へネシー社は当該のボトルについて中国で2001年に意匠登録出願、2002年に登録査定を受けています。さらに当該意匠権の存続期間終了後には、2015年に美術の著作物として著作権登録を行いました。その後、へネシー社は被告4社が販売するJOHNNYS BLUEなるブランデーのブランドのラインナップの中にパラディのボトルデザインと酷似しているものがあるとして著作権侵害を訴え、併せて賠償請求を求めたというのが本件の経緯です。

 

広州知識産権法院(知的財産権裁判所)は、本件の焦点はパラディのボトルが美術の著作物として保護の対象となり得るか否かであると提示。実用的な機能を有する物品が著作権法の保護を受けるに当たっては、美感や芸術性を感じさせる特徴と実用性が分離しているかが判断基準となるとし、へネシー社のボトルはこの条件を満たすとして美術の著作物として保護を受けるに値すると判示しました。

 

しかし問題はその次です。被告4社は、へネシー社が当該ボトルの著作権者であるという証拠が不十分であると主張しており、広州知識産権法院もこれを支持。どういうことかといいますと、へネシー社の本件ボトルに係る著作権登録では著作物の種類が「法人著作」となっているのですが、それ以前の意匠登録では創作者が個人名になっているため、ボトルの著作権は本来デザイナーにあるのではないか、というわけです。そして当該作品が法人作品であるかどうかの根拠や、デザイナーとの間の契約の有無等も明確でない以上、へネシー社がボトルについての著作権を有するという証拠が不十分であるという理由で、広州知識産権法院はへネシー社の訴えを退けました。

 

本件はまだ第一審の段階にありますので、この後新たな証拠をへネシー社が提出する可能性もあり、最終的にどのような結論となるのかは現状不明です。ただ、本件の経緯を読んでまず筆者の頭をよぎったのは、著作権登録の実務に係る難しさです。

 

中国著作権登録を行う際には、権利の帰属や権利者が有する支分権、時には著作物の種類についてもどの項目を選ぶのが適切なのか判断が難しいケースがあり、そのような場合には個別に登録先官庁である版権局に照会する必要があるわけですが、ここでの回答は正直局内で統一されているわけではありません。極端なことを言えば、昨日確認した内容が今日覆る、そして、何が正しいのかはともかくとして、目の前の担当者が首を縦に振らない限り書類は受理されないため、先方の言うままに修正を余儀なくされることもあります(このため弊社も、複雑なケースの場合は念には念を入れて・・・という言葉では足りないくらい事前の確認を繰り返すことがあります)。

 

著作権登録を行うにあたっては権利関係の証明書などの提出も必要ですが、これは申請者自ら作成するものであり、申請書の記載内容と全く一致しないなど余程の問題がない限り、その内容の適否について追及されるようなことはありません。また、社内外を問わず個人に依頼してデザインを創作してもらうケースは当たり前のこととして存在しますので、勿論その場合は個人が創作者、依頼元の企業が著作権者というかたちで登録が可能です(ただ、日本で著作者人格権が譲渡できないのと類似の趣旨で、著作権者が有する支分権については若干の制限が生じます)。今回のへネシーのケースでは、以前の意匠登録公報の記載を基に著作権登録の内容との矛盾を突かれてしまったわけですが、万が一、これが著作権登録時の形式的な瑕疵にすぎないのだとすれば、へネシー社にとってはあまりに酷な話ではないかと思います。

 

あまり例がない案件ですので、著作権登録に係る問題も含め、経緯をウォッチしていきたいと考えています。

 

(2019/5/29 日本アイアール A・U)

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