厳罰化の傾向強まる、外資被害のソフトウェア著作権侵害事件に2.5億円超の損害賠償判決
知的財産保護の体制強化と共に、権利侵害に係る損害賠償額も徐々に引き上げられている。
今年6月、ソフトウェア著作権の侵害事件において900万元(約1億5,000万円)の高額賠償の判決が下されたばかりだが、今回は外資系企業がソフトウェア著作権を侵害された事件について、侵害側に1,505万元(約2億5,000万円)の損賠賠償が命じられたことが話題となっている。
2018年7月10日付の中国知識産権報によると、今回被害を受けたのは仏のソフトウェア最大手、ダッソー・システムズ(以下、「ダッソー」)。
このほど、ダッソーは上海で自動車エンジニアリングを手がける上海同捷科技股份公司(以下、「上海同捷」)がダッソーの代表的な3次元CADソフトウェア、「CATIA」シリーズについて大規模な違法使用を行ったとして上海知識産権法院に起訴した。
一審判決では上海同捷に対し、侵害行為の停止と共に、1505万元(約2億5,000万円)の賠償が命じられた。
事態が発覚したのは、人材募集のウェブサイト上で上海同捷がCATIAに熟達したエンジニアの大量募集をかけているのをダッソーが発見したことが発端である。ダッソーはCATIAの違法使用の証拠を押さえるべく上海知識産権法院に証拠保全を依頼。上海同捷でパソコンに対するサンプリング調査を行った結果、大部分にCATIAシリーズのソフトウェアがインストールされた形跡があるなどの証拠を得た。上海同捷は証拠不十分のほか、ソフトウェアの使用が教育目的であるため違法性はないなどの反論を行ったが、いずれも退けられた。
結果として、上海同捷はダッソーの許諾を得ずに経営場所でCATIAシリーズをパソコンにインストールしていたとして、ダッソーの有する複製権を侵害していると認定された。
上海知識産権法院の裁判官によると、賠償額確定の要素は、上海同捷が違法にソフトウェアをインストールしていたパソコンの台数、CATIAシリーズのソフトウェアの価格、侵害の期間、主観的要件としての上海同捷に悪意が認められることの4つ。諸要素を考慮すると、著作権法に定める法定賠償金額の上限50万元をはるかに上回るとの見解である。
現段階では第一審を終えたのみであり、最終的にどのような判決が下されるかは分からないが、ソフトウェア著作権という比較的新しい領域における権利侵害事件であり、また当事者が外資系企業であるということからも、今後の動向が注目される。
(日本アイアール A・U)